目的と効果

マンションで用いられる排水通気設備の特徴、改修工事のポイントについて解説します。改修方法を検討するためには、これらを理解しておくことが重要です。

排水通気設備の特徴

排水管の性能を保つためには、排水が流れる際に管内の空気をどこに逃していくかがポイントとなります。空気を逃がすための様々な方式がありますが、ここでは、マンションにおける代表的なものを説明します。

①通気立管方式

排水管と空気を逃がす通気管を別々に設置し、排水が流れる際に管内の空気を通気管に流す方法です。中層マンションに多く用いられます。

通気立管方式

②伸長通気方式

通気立管を使用せずに排水をおこなう方法で、①の方式より排水管のサイズが大きくなります。主に団地タイプのマンションに用いられます。

伸長通気方式

③特殊排水継手方式

特殊排水継手を用いて、排水管と排水通気管を同一配管とする方法です。特殊排水継手には、管壁面に排水を流すための整流板がついています。それにより、管の中央に空気が流れるようにして排水性能を満たすことができます。排水管と通気管の2本分を特殊排水継手により1本で配管できることから、集合継手または集合管とも呼ばれています。

特殊排水継手方式
特殊排水継手システム

マンション特有の排水管設置

マンションにおいて、専有部排水管の設置位置は工事計画をおこなう上で重要なポイントとなります。

下図のように専有部の排水管が床スラブの上に設置されているか、床スラブ下の下階住戸の天井内に設置されているかで、計画が大きく異なります。

床スラブ下配管の場合においては、共用部、専有部の区分けが非常に難しく、専有部の排水管のリニューアルをおこなうことは困難な問題となります。

床スラブ上配管
床スラブ下配管

改修工事における計画のポイント

排水管がどこに設置されているか、どのような配管を使用しているかは、改修計画をおこなう上で非常に重要です。

①排水管改修ルートについて

排水管には必ず勾配が必要となるため、既存と違うルートでの配管は困難となります。基本的には同じルートで更新することをお勧めします。

②排水音の問題

住戸内のパイプスペースに共用排水立管が設置されていることがほとんどであることから、上階から流れる排水の音については、十分な検討をおこなうことが必要です。

施工性のよい材料を使用することは、工事計画をおこなう上で有利であることから、ビニル系の管材が選定されることがほとんどですが、ビニル系配管自体には遮音性能を有しません。必ず、遮音シート等で処置をおこない、現在使用している配管より良い遮音性能で更新をおこなうことがポイントです。

③ 配管口径の問題

現在の設計に当てはめると、排水管の口径が小さいマンションが存在します。そのまま改修すると排水不良の原因となるため、再度、計画をおこなうことをお勧めします。近年、特殊排水継手による方法に計画変更をおこなうマンションが増えてきています。