目的と効果
マンションは戸建住宅までの仮住まいと言われていましたが、価格、立地、機能、構造等の理由から永住型の住まいとして認知され、日本の住宅の20%弱を占めるまでになりました。集合住宅であるマンションの特性を生かした設備の一つが、全住戸集中監視型のセキュリティインターホンです。現在のインターホンは、全住宅のセキュリティ監視やオートロック機能により、戸建住宅では実現できないマンション独自の設備として進化してきました。インターホン設備は定期的な更新改修により、経年による劣化や故障修理対応の終了、セキュリティ機能等による安全・安心の要求性能の向上に対応することが求められています。
工法・仕様
インターホン設備は、既存配線を再利用して、インターホン親機、子機、警報監視盤、ロビーインターホン等の機器類を交換して改修します。火災感知器、ガス感知器類は、有効期間を過ぎていなければ、原則として再利用したほうが良いと思います。
現在のインターホン設備機器は、消防特例基準または告示40号による消防認定品の機器を使用します。このインターホン機器のメーカーとしては、パナソニック株式会社、アイホン株式会社の2社があり、それぞれ埋込型と露出型があります。現状のインターホンに合わせて2社4機種から選定します。なお、この2社のインターホンの機能、仕様、価格はほとんど同等です。
メーカー | パナソニック株式会社 | アイホン株式会社 | |
---|---|---|---|
形状 | 埋込型 | 埋込型 | |
名称 | Clauge(クラウジュ) | Dearis(ディアリス) | |
機器外観 |
180×252 |
180×240 |
|
インターホン 通話機能 |
通話機能 | 住戸玄関・エントランス | |
受話器形状 | ハンズフリー | ||
セキュリティ機能 | 非常警報 | 火災警報・ガス漏れ警報・非常警報・防犯警報 | |
オートロック機能 | オートロック部位 | エントランス | |
モニター機能 | モニター仕様 | 7インチ液晶カラーモニター | |
モニター画素数 | 115万画素 | ||
録音・録画 | 録音録画機能 | ||
録画件数 | 15秒動画100件 | 15秒動画90件 | |
警報移報機能 | 管理室警報移報 | 住戸番号別・警報種別表示 | |
その他機能 | 連絡機能 | 一斉放送機能+管理室から住戸呼出し | |
その他機能 | 掲示アンケート機能 住戸間通話機能 |
掲示アンケート機能 スマホ通話解錠対応機能 |
ポイント
①インターホンメーカーの選定
インターホンメーカーにはパナソニック㈱とアイホン㈱があり、この2社のインターホンの機能・仕様・コストはほぼ同等です。このため、単に費用だけを比べて2社の選定をする場合がありますが、これは注意が必要です。
インターホンメーカーを変える場合、例えばパナソニック製のインターホンがついているマンションにアイホン製のインターホンを導入すると、各住戸の火災感知器の内1カ所についている終端抵抗を交換する必要があります。
インターホン改修工事の範囲は、インターホン親機がついているリビングダイニングルームと玄関子機がついている玄関回りに、作業員が入って工事を行います。しかし、インターホンメーカーを変えると、作業員が各部屋(LDR、洋室、和室、台所、4㎡以上の物入等)に入って終端抵抗のついている火災感知器を探し、天井の火災感知器のカバーを外して終端抵抗を交換する必要があります。このため、居住者の方に大きな負担をかける可能性があります。
このようなことから、インターホンメーカー選定は既存メーカーに合わせることを原則とします。もし、メーカーを変えたい場合は、居住者の皆様に各室内に作業員が入って工事を行う点を十分に説明する必要があります。
なお、このような説明をせずに安易に"パナソニックでもアイホンでも選べます"という工事会社もありますので注意が必要です。
②住戸内工事の手順
インターホン改修工事は、全住戸内に入り工事を行いますので、居住者の方の在宅が必要になり、工事日に合わせて在宅の要請をします。以前は各住戸にアンケートを行い、在宅できる都合の良い日を伺って調整していましたが、それでは工事がなかなか進みません。このため、最初に工事予定を各住戸に配布し、都合が悪い方のみ日程の調整を行う方法がとられるようになりました。これにより、短時間で住戸内のインターホン機器の交換工事を行うことができます。
③新旧同時オートロック運用
インターホン改修工事を行う場合、原則としてインターホン設備は停止します。すると、オートロック機能や各住戸から管理人室への警報移報機能が止まるため、工事期間中のマンションのセキュリティが低下し、安全安心が保てなくなります。この場合は、新旧オートロックの同時運用を行います。インターホンの共用幹線を利用し、新旧の警報監視盤とロビーインターホンを併設して、工事進捗に合わせて旧システムから新システムに移行するようにします。これにより、工事期間中も管理室への警報移報やオートロック機能を生かすことができるようになります。
④玄関子機にカメラを設置
マンションのセキュリティ機能向上の点から、インターホン改修時に玄関子機にカメラを設けて住戸内から来訪者の確認ができるようにする要望があります。この場合、カメラ付玄関子機は大きくなるため、既存の玄関には収まりにくくなります。そこで、玄関子機全体を15mm程度出して納めるようにします。