目的と効果

開放廊下(共用階段を含む)に施工されている防水層を含む仕上工法には寿命があり、機能維持を目的とした定期的な改修工事をおこなうことが必要です。改修工法と仕様は、既存の防水層・仕上工法の種類により選定します。また、開放廊下は複数の居住者が利用するため、安全性にも配慮した工法の選択が必要となります。

工法・仕様

ウレタン塗膜防水+屋外用塩ビ製防滑シート複合工法

マンションの開放廊下(共用階段・バルコニーにも対応可能) における改修工事で数多く採用されているウレタン塗膜防水材と屋外用塩ビ製防滑性シートとを併用した工法です。
最近の新築マンションでは、分譲時より開放廊下・バルコニー・共用階段は、屋外用塩ビ製防滑シート仕上げになっています。

  モルタル仕上げ ウレタン塗膜防水
(全面塗布)
ウレタン塗膜防水
+塩ビ製防滑シート複合工法
意匠性 ×
単調
×
単調

多彩な意匠性
歩行感 ×
硬い

適度な硬さ

適度な硬さ
防滑性
滑りにくい

防滑処理をしない場合
雨水滞留時に滑りやすい

水に濡れても滑りにくい
転倒時の安全性 ×
危険

材質の特性により衝撃を吸収

材質の特性により衝撃を吸収
衝撃音吸収性 ×
歩行音等が発生しやすい

工法により歩行音を吸収

材質の特性により歩行音を低減
工事中の歩行 ×
施工中は通行止めが発生する
×
施工中は通行止めが発生する

施工中も歩行可能
(防滑シートは半分ずつの施工)
耐久性
表面にクラック等が発生し、
躯体の劣化を促進する恐れ有り

工法により5年~10年程で
トップコートの上塗りが必要

10年以上の期間に亘り
メンテナンスフリーの実績有り
メンテナンス性
容易

容易

エンボス形状である為
定期的な清掃が必要
ウレタン塗膜防水材+屋外用塩ビ製防滑性シート複合工法仕様例

防滑シートには、その製造上、インレイド構造やフィルム積層タイプ等の複数の構造がありますが、次回の大規模修繕工事までの期間を鑑みて、耐久性の高い製品を選定するようにします。
また、ウレタン塗膜防水材も同様に、耐久性を考慮した製品選定が必要です。

ポイント

ウレタン塗膜防水材+屋外用塩ビ製防滑シート複合工法は、前項の表中にある通り、従来の工法と比較して、デザイン性や歩行感、歩行音軽減などの快適性、防滑性による安全性の向上等を図ることができるだけでなく、工事期間中の日常生活への制限を低減することが可能なマンションの大規模修繕工事に適した工法です。
最近では、衝撃吸収性能や防汚性能をさらに高めた防滑性シートも発売されています。
付加価値の高い製品を選定することで、さらなるマンションの資産価値向上を図ることが可能となります。

劣化写真

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直射光暴露に起因する防滑性シートの変退色
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防滑性シート裏面への浸水に起因する膨れ
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防滑性シートの収縮による継目不良
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劣化に起因するウレタン塗膜防水材の破断

ウレタン塗膜防水材の施工部位には、経年劣化等に起因する摩滅や破断、その他要因による膨れ等が生じる場合があります。また、防滑性シートの施工部位にも、様々な要因から膨れ、剥がれ、継目不良等が生じることがあります。
上述の現象は、防水層裏面への浸水リスクを高め、躯体コンクリートの含水率上昇や中性化の進行を促進する恐れがあります。目視による定期的な観察を実施することで、これらの現象を早期に発見し、再施工や補修等の対策を講じることが肝要です。

例:対象となる部位と作業工程

  • 既存の仕上材を撤去し、下地調整を実施した上でウレタン塗膜防水材施工を行う。(写真①)
    (既存の仕上材の状況により異なる場合があります)
  • 防滑性シート施工部位の下地補修・清掃を行う。
    (施工下地の状況により異なる場合があります)
  • 専用接着剤を塗布し、防滑性シートを張り付けた後に圧着を行う。(写真②、③)
  • 防滑性シート継目部位に専用溶接棒にて熱風溶接処理を行う。
    (仕様により、溶接以外の工法を適用する場合があります)
  • 防滑性シートの端部に専用端部処理剤にて端部処理を行う。(写真④)
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①ウレタン塗膜防水材施工後の状況
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②専用接着剤塗布の状況
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③防滑性シート張り付け後の圧着状況
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④専用端部処理剤による端部処理の状況